あたらしいとし
「いや、あっ、ちょっあの…ほんとムリなんで…」
「イヤイヤ、いけるって。もっとそっち詰めろよ。」
「―――…なんで他に3箇所も空いてるのによりによってオレの隣選ぶんだよー…」
今日は大晦日。練習もさすがに早く終わったため、榛名がうちに押しかけてきた。
年の終わりくらい落ち着いて家で過ごしたら、と思わないでもないけれど、
そりゃあできることなら、好きなひとと一緒に過ごしたいって思う。
元日である明日は、各自の自主練のみなので恐らく部員それぞれが寝正月なり
ゲーム三昧なり初詣なり、各々が有意義な正月を過ごすだろう。
なのにどういうことか。おれは今、榛名に狭くて苦しい思いを味わわされている。
なにも、よりによって大晦日にしなくてもなあ……
……おれ、何かしたっけ……それともまた、いつもの榛名の気まぐれなのか。
「なんていうか、人肌?が恋しいっていうか?」
「………それさあ、ただ寒いだけでしょ」
「いやまじ、そんなことないから。」
おれの不満をあらわにした質問にも、榛名は眉ひとつ動かさず即答してきた。
たまにだけれどあまえたになる(しかも時と場所を選ばず、だ。唐突にそういう気分になるらしいけれど、
榛名が本気になると、構わないとブッ殺すみたいな勢いで来られるので正直、たまったもんじゃない。)榛名だが、
今日もそういう気分なのだろうか。
今日は今日で、いい歳したヤローふたりでコタツに入っている。そこまでは、百歩譲ってもいい。
雰囲気も険悪ではないし、しっぽりと言えなくもない。が。
入っている箇所が問題だ。…何故、ガタイのいいヤローが二人も入って只でさえ狭いコタツに、よりによって一つのコーナーへ二人で
詰まらなければならないのだろう。今の状況だとコタツに入る、というよりもむしろコタツに詰まるという表現の方が正しい気がする。
さっきから窮屈でたまらない。脚を動かしたくてもすぐ隣の榛名にぶつかるこの状況。
榛名は榛名でおちつかないのか、さっきからこっちの脚ばかりを蹴りつけてくる。いい加減脛が痛くなってきた。
ふたりでドアを背にして、腹這いになってテレビを見ていた。
何とはなしに点けっぱなしにしていた、年末恒例の紅白も、もうすぐトリの歌手が出る。もうすぐで、新しい年が始まるのだ。
……なのになんでこんな狭い思いを……
『秋丸〜、』
『「あ」』
うしろむきでふたり、コタツの一箇所に詰まってジタバタしていたところにいきなり家族が入ってきた。首だけでふたりとも振り向く。
……母さんだ。
榛名以外、おれと母さんは条件反射とでもいうのか、かたまってしまう。
この場では榛名だけそぐわない様子で、硬直したおれの脛を相変わらず楽しそうに蹴り続けている。硬直してないのは榛名だけ。
狭いのが楽しいのか、無闇に上機嫌だ。
ああ、なんとも母と顔を合わせるのがいたたまれない。母は二の句が告げないというように、後悔でいっぱいの顔。
…なんていうか。言い訳のしようがないとしか言えないシュチュエーション。まあ、なるようになるしかない。
『ご、ごめんね、ノックしないで開けちゃって…!出直すわ!!!』
「あっ、お邪魔してまーす。今年もよろしくお願いしまーす!」
「あー…いいよいいよ。どうしたの?」
「……あ、榛名くん。こちらこそ今年も宜しくお願いします、秋丸と仲良くしてやって頂戴ね。」
「あのー…」
なんだか、おれ抜きで話が進んでいる。
「はい!モチロンです。これからもよろしくなっ!」
榛名が威勢よく答えておれの背中をはたいてきた。このっ…バカ力!
榛名は何に対しても、加減という言葉を知らない。この年でそれって、ちょっとどうなんだ。
「いっ、いて、オマエ力の加減ってもんを…」
おれひとりだけのけものにされて話がすすんでいく。なんだろうこの状況は。
(部外者、みたいじゃんか。)
『ふふ、…?あっ、そうだった。これ、伯母さんから届いたから。良かったら榛名くんと食べなさいよー。』
「あ、うん、ありがとう。」
『箱で来たから、何なら榛名くんにもおすそわけ、持って帰って貰おうかしらね』
「ありがとーございます!ごちそーさまっす!」
『じゃあ、お邪魔してごめんなさいね〜』
「はいっ!それではー!」
「ちょっ…榛名元気いいね…」
何だか釈然としないままのおれと何故か威勢のいい榛名をおいて、母さんが部屋を出ていく。
部屋には、いい匂いのするミカンが山盛り入ったかごがひとつ。
「よっしゃ、ミカンいっただきまーす」
「あのホント狭いんだけどソレ食う前にどうにかしてよ」
『2005年のはじまりです―――』
「あ」
「おめで、と、―――」
チュ、
「えへへ」
あ?なに?いまの
(もしかして…)
「―――明けちゃったじゃん、」
「ま、終わりよければすべてヨシとかいうだろ?」
「うん…まあ…盛大に狭かったけどね…」
「まあまあ。文句いうなよ、せっかくの新年だろ?」
「そだね。えっと。えー…今年もどーぞ宜しくお願いいたしま、ワッ!」
「おー!おれも、よろしくな!」
榛名がおれの言葉を遮って、背中におぶさってくる。無闇に笑顔だ。…あー…榛名のほうがガタイいいっていうのに。
重いったらない。――でも、嫌じゃないんだもんな、おれも。
今年も来年もその次の年も、一緒にいれたら。
それだけで。
「…まあ、退屈はしないよね、気分屋だけど」
「あ?何か言った?さー食うぞ!」
「んーん、何も。これからどうする?」
「取り敢えず一眠りしたら初詣でも行くか」
「そうだね。混むけど、夜のうちは寒いもんね」
なんかやっぱりとてつもなく狭いのにかわりはないのだけれども、
コタツが熱いのか(そりゃあこれだけ密着してれば)
額にすこし汗をにじませ、無心で美味そうにミカンを頬張っている榛名をみると
何だかそんなのもどうでもよくなってくる。
「狭いけど―――せっかくだし、おれも食べるか」
「おー、食え食え」
なんてことのない、至って普通の年明け。狭いコタツとミカンと榛名。
だけれど、今年もきっと、最高の年になるような気がした。




初あきはるです。何だかわけわからないですね…(書いた本人が…!)
母と榛名の会話中に秋丸がもんもんしてるのは、何だよこの仲の良さはーって思ってるのと、榛名ってほんっと外ヅラいいんだからーって思ってるのと、
おれだけ夢中みたいでなんだかなぁ・・・ってかんじのあれやこれやです…ウホッ
ただのボラブめがねじゃねーの…(鬱)すみませんでした…おぉ本命のあきはるがこれかよ…しょ、精進しまーす!
もち (2004/12)